※『古事記』版は記述が少なく、詳細が分かり辛い為『日本書紀』版を元としています。
※神名などの表記も、極力『日本書紀』版に合わせています。
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【あらすじ/要約】
忍熊王との戦い
●新羅を討った翌年(摂政元年)2月、皇后は群臣を引き連れて穴門豊浦宮に移り天皇の殯を行い、畿内への帰途についた。
●都には誉田別尊の異母兄にあたる、天皇の長男、次男である麛坂王、忍熊王がいた。彼らは皇后たちが誉田別尊を君主(天皇、あるいは太子)に推し立ててくることを察し反乱を起こした。
●彼らが播磨の赤石に父の山陵を作ると称して挙兵、五十狹茅宿禰(いさちのすくね)に命じて東国から兵を集めさせた。
●そして菟餓野というところで「戦いに勝てるならば良い猪が捕れる」と誓約(うけい)の狩りを行った。すると突然現れた獰猛な赤い猪に麛坂王は食い殺されてしまう。凶兆と理解した忍熊王は住吉まで撤退した。
●忍熊王たちが待ち受けていることを知った皇后は、一旦紀伊に寄って誉田別尊を預けて北上。
●しかし紀淡海峡を突破できなかったため明石海峡を回って務古水門に至る。
●その道中で神々から再び託宣があり、天照大神の荒魂を廣田神社(兵庫県西宮市)・稚日女尊を生田神社(神戸市)・事代主神を長田神社(神戸市)・住吉三神の和魂を住吉大社(=「大津渟中倉之長峡」大阪市住吉区)に祀った後に進撃。武内宿禰らの活躍によって忍熊王を追い詰め平定する。
●同年10月 皇后は群臣に皇太后と認められた。この年が摂政元年となる。
●摂政2年11月 天皇を河内国長野陵に葬る。
●摂政3年1月 誉田別尊を皇太子とし、磐余若桜宮に遷都する。
●摂政13年2月 皇太子は武内宿禰を従えて角鹿の笥飯大神(気比神宮 福井県敦賀市)に参拝。この角鹿の地は仲哀天皇と神功皇后が熊襲征伐に赴く前に行宮「笥飯宮」として住まれた場所である。
七支刀と新羅再征
●摂政5年3月7日、本国に一時帰国したいという微叱己知(新羅からの人質)の願いを聞き入れて葛城襲津彦を監視に付けるも逃がしてしまう。
●摂政46年 この年から仕切りに百済からの使者が渡来し、我が国への恭順の意を表している。(以降、百済は日本の同盟国として、その滅亡まで友好的な関係が続く)
●摂政47年4月、新羅と百済が朝貢してきた。百済の貢物が酷くみすぼらしいので使者の久氐を問い詰めたところ、新羅に貢物を奪われたと訴えた為、新羅を再征伐することになった。
●摂政49年 将軍として派遣された荒田別・鹿我別は百済の木羅斤資・沙々奴跪と共に七つの国を平定。以後、摂政52年まで久氐が日本と百済を往復。百済から「七枝刀」をはじめとする重宝が献上された。
※石上神宮に伝来している国宝・七支刀はこの時のものとされ『日本書紀』で述べられている内容を裏付けるものとなっている。
●摂政62年、新羅が朝貢してこないので葛城襲津彦に征伐させる。
●摂政69年、4月に崩御。
その他
浮鯛の伝承(浮鯛祭の起源)
●神功皇后が熊襲征伐に向かった天皇と合流するため角鹿(現:敦賀)から豊浦津(現:下関市長府)へ赴く途中の渟田門に着いたときのことである。皇后が船上で食事をしていると多数の鯛が寄ってきた。そこで酒を注いでみると鯛は酔ったように浮かんだ。土地の人々は海人は大漁の鯛を「聖王から頂いた魚だ」と喜んだ。以後、毎年同じ時期になるとに魚が酔ったかのごとく浮かんでくるようになったという。
●この現象は“浮き鯛現象”と呼ばれ、現在では科学的に説明できる。
●産卵のために外海から瀬戸内に入ってきた鯛が、海流の関係で速い潮の流れにもまれるために、体内のうきぶくろが上手く機能せず浮かび上がってしまうのだという。瀬戸内でもこの現象がよく起こるのがこの幸崎町能地一帯であり、これは春の風物詩としても名高く、春の季語としても採用されている。
●また、この神秘的な現象について今でも祭りがおこなわれている。
⇨浮鯛神社の『浮鯛祭』
陵・霊廟
神功皇后 狹城盾列池上陵(奈良県奈良市) 遺跡名は「五社神古墳」で、墳丘長275メートルの前方後円墳。
信仰
●住吉三神とともに住吉大神の1柱として、また応神天皇とともに八幡三神の1柱(祭神)として信仰されるようになる。
●武家社会の神である八幡神(応神天皇)の母にあたる神であり、源義家など数多くの武人が神功皇后を崇拝していた。
●八幡神と同じく、その言い伝えは九州はもとより関東から近畿の大津や京都や奈良や大阪の住吉大社、瀬戸内海を挟んで広島や岡山、四国と、日本中に数多く存在する。今でも全国各地で神功皇后の三韓征伐を祝うための山車が存在しており、その業績をたたえる祭りが多い。
●宇佐神宮(大分県)・住吉大社(大阪府大阪市)・宮地嶽神社(福岡県福津市)・風浪宮(福岡県大川市)、御香宮神社(京都市伏見区)などの神社の祭神である。
●また所縁ある香椎宮(福岡市)・筥崎宮・宇美八幡宮(福岡県宇美町)・聖母宮(壱岐市)でも祀られている。
【キーワード】
・仲哀天皇
・氣長足姫尊を=神功皇后
・武内宿禰
・誉田別尊=応神天皇=八幡神
・撞賢木厳御魂天疎向津媛命(つきさかきいつくのみたま あまさかるむかひつひめのみこと)
・尾田の吾田節の淡郡に所居る神
・天事代虚事代玉籤入彦厳之事代神(あめにことしろそらにことしろたまくしいりびこいつのことしろのかみ)=事代主神
・住吉三神(表筒男・中筒男・底筒男神)
・大津渟中倉之長峡(おおつのぬなくらのながお)
・廣田神社
・生田神社
・長田神社
・住吉大社
・気比神宮
・七枝刀=七支刀