記紀神話

【ざっくり記紀神話】14.大国主神 -妻問い(神語り)

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※あらすじは、『古事記』版を元としています。

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【あらすじ/要約】

神語(かむがたり)

大国主神の更なる求婚

●八千矛神(やちほこのかみ=大国主神)は高志国の沼河比売(ぬなかわひめ)に求婚するために出かけた。
●沼河比売の家に着くと、すぐに沼河比売の美しさ・賢さを讃えて求婚をしていると夜が明けてしまった。
 夜明けを知らせる鳥が鳴いたことを恨みながらその気持ちを歌にして沼河比売に伝えた。

八千矛神(大国主神)⇨ 沼河比売

八千矛の 神の命は 八島国 妻娶きかねて 遠々し 高志の国に 賢し女を 有りと聞かして 
麗し女を 有りと聞こして さ呼ばひに 有り立たし 呼ばひに 有り通はせ 太刀が緒も
末だ解かずて 襲衣をも 
末だ解かねば 嬢子の 寝すや板戸を 押そぶらひ 我が立たせれば 引こづらひ 我が立たせれば
青山に 鵼は鳴きぬ さ野つ鳥 
雉は響む 庭つ鳥 鶏は鳴く 心痛も 鳴くなる鳥か 此の鳥も 打ち止めこせぬ いしたふや
天馳使事の 語りごとも 此をば

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【訳】
八千矛神は、大八島国で好ましい妻を娶ること出来ずにいたが、遠い越国に賢く美しい女性がいると聞いて、求婚しようと何度も通っている。
その時は、太刀の緒も解かず、襲衣も脱がずに少女の寝ている家の戸を揺さぶった。
そうして私が立っていれば、(夜が明け)山の鵼が鳴き、野の雉、庭の鶏が騒ぎ鳴き始めた。
私を苛立たせるように鳴く鳥どもが鳴き止まないものか。
天の使いに、あの鳥どもを打って鳴くのを止めさせて欲しいと願い語り伝えた。

●それに対し、沼河比売は戸を開けずに内から以下の歌を返した。

沼河比売 ⇨ 八千矛神

八千矛の 神の命 ぬえ草の 女にしあれば 我が心 浦渚の鳥ぞ
今こそば 我鳥にあらめ 後は 汝鳥にあらむを 命は な殺せたまひそ
いしたふや 天馳使事の 語り言も 此をば

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【訳】
八千矛神よ、私はなよなよとした草のような女ですから、私の心は砂浜をゆく千鳥のようなものです。
今はまだ決心がつきませんが、やがては貴方のものになりましょう。
どうか、天の使いに鳥を殺すように願うのはやめてください。

またこのようにも返した。

青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜は出でなむ 朝日の 笑み栄え来て
栲綱の 白き腕 沫雪の 若やる胸を そだたき たたきまながり
真玉手 玉手さし枕き 百長に 寝は寝さむを あやに な恋ひ聞こし
八千矛の 神の命 事の 語言も 此をば

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【訳】
緑山に日が隠れたら、ぬばたまのような漆黒の夜においで下さい。
朝日のような笑顔で、白い腕や沫雪のような柔らかい胸を叩いて、私を愛しみ。
玉のような手を差しかわして、足を長く伸ばしてお休みになると良いでしょう。
だからそんなに無闇に恋い焦がれないでください、八千矛神よ。
どうか語り事を聞いて下さい。

●八千矛神は、沼河比売の返歌の意を汲み、その日の夜は会うことなく、その翌日の夜に再度訪れ結婚された。

正妻 / 須勢理毘売の嫉妬

●八千矛神の正妻である須勢理毘売は大変嫉妬した。

●煩わしく思った八千矛神は、出雲国から倭国に逃れる際に須勢理毘売に、以下の「自分が去れば寂しいだろう」と歌にして伝えた。

八千矛神 ⇨ 須勢理毘売

ぬばたまの 黒き御衣しを ま具ぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見る時 はたたぎも 是は適はず 辺つ波 そに脱ぎ棄て
鴗鳥の 青き御衣を ま具ぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見るとき はたたぎも 是も適はず 辺つ波 そに脱ぎ棄て
山県に蒔きし 茜㫪き  染木が汁に 染衣を ま具ぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見るとき はたたぎも 是宜し

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【訳】
黒い御衣をすっかりと着こなしてみたと思っていたが、水鳥のように胸元を見るように袖を振ってみても、どうも似合わない。
岸辺に寄せた波が引くように衣裳を後ろに脱ぎ捨て、カワセミにも似た青い御衣を着こなして袖を振ってみても、やはり似合わない。
岸辺に寄せた波が引くように衣裳を後ろに脱ぎ捨て、山畑に蒔いた茜で染めた御衣を着こなして袖を振ってみると、これは似合うようだ。
愛しい妻よ、私が群鳥のように皆と共に去ってしまえば、貴方は泣かないと言うかもしれないが、きっと山の一本のススキのように項垂れて泣いてしまうだろう。
そして、その吐息は朝の霧のように立つだろう我が妻よ。

●須勢理毘売はその歌に対し、酒杯を捧げて夫のそばに立つと、夫を留める歌を返した。

須勢理毘売 ⇨ 八千矛神

八千矛の 神の命や 吾が大国主  汝こそは  男に坐せば
打ち廻る 島の崎崎 かき廻る 磯の崎落ちず 若草の 妻持たせらめ
吾はもよ 女にしあれば 汝を除て 男は無し 汝を除て 夫は無し
綾垣の ふはやが下に 苧衾 柔やが下に 栲衾 騒ぐが下に
沫雪の 若やる胸を 栲綱の 白き腕 そだたき たたきまながり
真玉手 玉手さし枕き 百長に 寝をし寝せ 豊御酒 奉らせ

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【訳】
八千矛神よ、我が大国主神よ。あなた様は男でいらっしゃいますから、どこにあっても若々しい妻をお持ちになることでしょう。しかし、私は女ですからあなた様を除いては男とこはおらず、夫いないのです。
どうか綾織の絹織物の帳の下で、絹の柔らかな寝具の下で、白い腕、沫雪のような柔らかい私の胸をそっと叩いて、愛しみ、玉のような私の腕を枕にして足を伸ばしてゆっくりお休みになって下さればよろしいでしょうに。
どうぞ、このおいしいお酒をお召し上がりください。


●そして、夫婦はすぐに杯を交わして誓いを結んで、互いの腕を首に掛け合って仲睦まじくされ、今に至るまで鎮座している。

●八千矛神が須勢理毘売や沼河比売と交わされた歌と神語(かむがたり)という

【キーワード】

八千矛神=大国主神=大穴牟遅神=葦原色許男神=宇都志国玉神
・沼河比売
・須勢理毘売
・神語

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